現代の故宮と観光情報
北京故宮の現代の状況
北京故宮（The Imperial Palace）は、1949年の中華人民共和国成立以降、大規模な修繕が行われてきました。1950年代からの修復作業により、多くの宮殿や建築物が復元され、1961年には全国重点文物保護単位に指定されました。この保護単位の指定は、故宮の歴史的価値と重要性を再確認するものであり、その後の保存活動に大きく貢献しています。
故宮博物院には現在、約186万2690点の文物が収蔵されています。これらの文物は、故宮の歴史と文化を象徴するものであり、古代中国の皇室文化や日常生活を知る手がかりとなります。1987年には、故宮全体がユネスコの世界文化遺産に登録され、その歴史的価値と保存の重要性が国際的に認められました。
21世紀に入ってからは、故宮は年間600万から800万人の観光客を迎え入れています。観光客の増加は、故宮が中国国内外で広く知られ、訪れる人々にとって魅力的な観光地であることを示しています。観光事業の発展とともに、故宮への関心は衰えることなく、訪れる人々にとって重要な観光スポットとして位置づけられています。
近年、故宮の公開面積が拡大され、現在では76％の面積が公開されています。これは観光客にとって故宮の多くの部分を見学する機会を提供するものであり、歴史的建造物や展示品をより多くの人々が鑑賞できるようになっています。さらに、吉祥物「壮壮」と「美美」が初めて公開され、故宮の魅力をさらに高めています。これらの吉祥物は、中国の伝統的な龍と鳳凰を模したもので、故宮の象徴として多くの人々に親しまれています。
また、故宮内の慈寧宮区域や午門雁翅楼区域、東華門などの新しい区域が公開され、見学できるエリアが拡大しています。これにより、観光客は故宮の多様な側面を体験することができ、さらに多くの歴史的建築や展示物を楽しむことができるようになりました。故宮の修繕や保護活動は継続的に行われており、文物の修復や展示エリアの拡大が進められています。
観光情報と注意点
北京故宮は広大な敷地と豊かな歴史的背景を持つため、観光地として非常に高い価値があります。観光客は、太和殿、中和殿、保和殿といった主要な建物を訪れることができます。これらの建物は、皇帝の居住空間や宮廷での重要な儀式の場所として使用されてきたものであり、訪れる人々にとって中国皇室の生活や歴史を直接感じることができます。
さらに、故宮の後三宮である乾清宮、交泰殿、坤寧宮や、後方に広がる御花園も見学可能です。これらのエリアは、皇帝や后妃たちの居住区として使用されており、その生活空間や文化を垣間見ることができます。東六宮と西六宮も皇后や妃の居住場所として知られており、観光客にとって興味深い見どころとなっています。
故宮を訪れる際には、事前に入場券を購入することが必要です。故宮は年間を通じて多くの観光客で賑わうため、入場券はオンラインでの予約が推奨されています。特に、人気のある時期にはチケットが早々に売り切れることがあるため、計画的な準備が重要です。
また、故宮内の観光には一定の安全保障が求められます。観光客はセキュリティチェックを受ける必要があり、故宮内では指定されたルートに従って見学を進めることが求められます。これにより、観光客の安全が確保され、貴重な文化財の保護が図られています。
故宮への交通情報についても留意が必要です。北京の中心部に位置する故宮は、公共交通機関を利用してアクセスすることができます。地下鉄やバスの路線が充実しており、観光客は比較的容易に訪れることができます。しかし、故宮周辺は混雑することが多いため、訪問時には時間に余裕を持って行動することが推奨されます。
北京故宮の概要と歴史
北京故宮の概要
北京故宮（The Imperial Palace）は、明朝と清朝の時代に皇室の宮殿として使用された施設で、世界でも最大規模の木造建築群の一つです。この宮殿は北京の中心軸線上に位置し、四方を城壁と護城河で囲まれています。敷地面積は約72万平方メートル、建築面積は約15万平方メートルに及び、大小70以上の宮殿が立ち並んでいます。伝説では故宮には9999.5室の部屋があると言われていましたが、1973年に専門家によって実際に測定された結果、8707室が確認されました。故宮はその壮大なスケールと多くの建物が配置された構造で、古代中国の皇帝の権威と威厳を示しています。
故宮は南北に961メートル、東西に753メートルの広がりを持ち、宮殿全体は高さ10メートルの城壁で囲まれています。城壁の外側には幅52メートルの護城河が巡らされ、堅固な防御体制が整えられています。故宮には4つの主要な門があり、南には午門、北には神武門、東には東華門、西には西華門が配置されています。各城門は、それぞれの方向から宮殿へのアクセスを制御する重要な役割を果たしています。
故宮の内部は、外朝と内廷の二つの部分に分かれています。外朝は皇帝が政務を行う場所で、太和殿、中和殿、保和殿の三大殿が中心に配置されています。これらの殿は、皇帝の即位式や重要な儀式が行われる場所です。内廷には皇帝と后妃たちの居住区である乾清宮、交泰殿、坤寧宮があり、その背後には御花園が広がっています。東六宮や西六宮も内廷に含まれ、これらは后妃たちの居住場所として使用されました。
北京故宮の歴史
北京故宮の建設は、明の永楽4年（1406年）に開始されました。明の皇帝朱棣は、南京故宮をモデルにして新たな宮殿を北京に建設することを命じました。このプロジェクトは14年の歳月をかけて進められ、永楽18年（1420年）に完成しました。完成後、故宮は明朝と清朝の二つの王朝を通じて、24人の皇帝が居住する宮殿として使用されました。
故宮はその歴史の中で、幾度も火災や戦乱に見舞われ、多くの建物が損壊しましたが、その都度再建されてきました。明の時代には、嘉靖三十六年（1557年）と万暦二十五年（1597年）に大規模な火災が発生し、紫禁城の重要な建物が焼失しました。しかし、これらの建物は速やかに再建され、明の皇帝たちは紫禁城での統治を続けました。
1644年に明朝が崩壊した後、清の皇帝が紫禁城を接収しました。清の康熙や乾隆の時代には、紫禁城はさらに拡張され、修繕が行われました。康熙時代には、紫禁城全体の修復と再建が行われ、乾隆時代には多くの新しい建物が追加されました。乾隆帝は紫禁城をその時代の皇室の中心とし、さらに壮大な宮殿として完成させました。
清朝が終焉を迎えた民国時代には、故宮は激動の時代を迎えました。1911年の辛亥革命によって清朝が滅亡した後、紫禁城は一時的に溥儀皇帝の居住地として使用されましたが、1924年に彼が追放されると、紫禁城は一般に公開されることとなりました。この年、馮玉祥による「北京政変」が起こり、紫禁城は清室善後委員会によって接収されました。翌年の1925年には故宮博物院が設立され、故宮は博物館として一般公開されました。
これ以降、故宮は「故宮」として広く知られるようになり、20世紀半ばには荒廃していた建物が多く修復されました。故宮は現在、中国の重要な文化遺産として保存され、多くの観光客が訪れる名所となっています。
故宮の建築と配置
建築の配置と形式
故宮は、「前朝後市、左祖右社」という古代中国の帝都建設の原則に基づいて設計されています。この原則により、宮殿の主要な部分は前方（南側）に位置し、後方（北側）には市場が配置され、左側（東側）には祖先を祀る場所、右側（西側）には社稷を祀る場所が設けられています。この配置により、故宮全体は南北に961メートル、東西に753メートルの広がりを持つ長方形の形状をしています。
故宮の全体設計は、中軸線を中心に南北に一直線に並び、左右対称に設計されています。中軸線に沿って配置された建物は、故宮の中心を貫き、その対称性と秩序を保っています。故宮は外朝と内廷の二つの部分に分かれています。外朝には、皇帝の政務が行われる太和殿、中和殿、保和殿の三大殿が配置され、これらの建物は皇帝の威厳を象徴しています。三大殿は、皇帝の即位式や重要な儀式が行われる場所として機能していました。これらの建物は、黄色の琉璃瓦が使用され、豪華な装飾が施されています。黄色は皇帝の象徴として用いられ、建物の威厳と高貴さを示しています。
故宮の建物の屋根には、10種類以上の形式があります。これらの屋根は、異なる建物の役割や重要性を示すために使用されており、太和殿の屋根には黄色の琉璃瓦が使われています。また、東六宮と西六宮の建物の屋根には、異なる色の琉璃瓦が使用されており、皇帝と后妃の居住区を明確に区別しています。これにより、建物の配置と役割が視覚的に示されています。
主要な建物と配置
故宮には、南側の午門、北側の神武門、東側の東華門、西側の西華門の4つの主要な城門があります。午門は故宮の正門であり、外朝に通じる主要な入口となっています。この門は、皇帝が重要な儀式を行う場所への入口として機能し、その壮大な構造は故宮の威厳を象徴しています。
故宮内部では、外朝の中心に三大殿が配置されています。太和殿は、皇帝の即位式や重要な儀式が行われる最大の建物で、その後ろに中和殿が位置し、儀式の準備や皇帝の休憩場所として使用されました。保和殿は、皇帝が宴会や科挙試験の最終試験（殿試）を行う場所であり、皇帝の重要な活動の場として機能していました。
内廷には、皇帝と后妃たちの居住区である乾清宮、交泰殿、坤寧宮が配置されています。これらの建物は、皇帝とその家族の日常生活の中心であり、宮廷生活の中心として機能していました。乾清宮は、皇帝の主要な居住空間であり、交泰殿と坤寧宮は皇后の居住区として使用されていました。内廷の後方には、広大な御花園が広がっており、皇帝と后妃たちが自然の中でリラックスする場所として利用されていました。
さらに、東側には東六宮が、西側には西六宮が配置されており、これらは后妃たちの居住場所として使用されていました。これにより、内廷は左右対称に配置され、宮廷の秩序と階級を反映しています。東六宮のさらに東側には仏堂建築である天穹宝殿などがあり、西六宮の西側には仏堂建築の中正殿などが配置されています。
また、故宮の東側には寧寿宮区域があり、これは清朝乾隆皇帝が太上皇として退位後に養老するための場所として建設されました。寧寿宮区域は、乾清宮を中心に配置されており、その周囲には東六宮や西六宮が広がっています。これにより、内廷全体が皇帝の生活と権威を中心に構成されています。
故宮の宮殿は、壮麗な建築様式を持ち、庭院や独立した庭園が多く配置されています。これらの庭園は、宮廷生活の一部として重要な役割を果たしており、皇帝や后妃たちが自然の中で過ごす場所として利用されていました。このように、故宮はその配置と建築様式により、古代中国の宮廷生活と文化を反映しています。
