北京、グルメ、東来順の伝統と涮羊肉の魅力

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こんにちは、しばたく@北京です。

北京でグルメを探しているなら、東来順は外せません。
その理由は、東来順が清真料理の代表格として、特に涮羊肉(しゃぶしゃぶ)で名高いからです。
東来順は1903年の創業以来、北京の伝統的な食文化を継承しつつも、内蒙古産の厳選された仔羊肉を使用した料理で、国内外の観光客に長く愛されています。
また、2008年には涮羊肉の調理技術が国家級無形文化遺産に登録され、東来順の技術と品質が公式に評価されています。
このように、東来順は北京グルメを代表する一店であり、その名物料理である涮羊肉は、歴史と伝統を味わいたい人には必見の選択肢です。

東来順の概要と代表的料理

東来順の歴史と名物料理:涮羊肉

東来順は1903年に創業された、北京を代表する清真料理の老舗チェーン店です。その特長的な料理は「涮羊肉」であり、内蒙古産の仔羊を使用することで、質の高い食材を提供しています。創業者の丁徳山は、もともと王府井の東安市場で露店を構え、雑麺や蒸し餅を販売していました。その後、涮羊肉を取り扱うようになり、店は次第に繁盛し、東来順の名は広く知られるようになりました。

涮羊肉は、青花瓷の皿に並べられるほど薄くスライスされた羊肉を特製の銅火鍋で煮込むスタイルで提供されます。羊肉の薄さは、かつては手作業で切り分けられていましたが、現在では特製の機械が使用されています。火鍋は銅でできており、火力を保ちながら羊肉を素早く調理することが可能です。この伝統的な調理方法が、北京の涮羊肉文化を象徴する要素となっています。

羊肉の選定と調理技術の伝統

東来順で使用される羊肉は、内蒙古の黒頭小尾羊の仔羊のみを厳選しています。選ばれた仔羊は、特に脂肪と赤身のバランスが良い後脚や脊肉が使われ、これが涮羊肉の品質を保つ重要なポイントとなっています。創業当初は、肉のスライス作業は職人が手作業で行っており、その技術は非常に高い評価を受けていました。肉片は薄く切り分けられ、青花瓷の皿に並べられると、その薄さで皿の模様が透けて見えるほどでした。

現在、この肉のスライスは機械化されていますが、使用される機械は東来順特製で、創業当時の技術を踏襲したものです。肉の質や切り方は変わることなく、伝統を守りながら提供されています。また、使用される銅火鍋は、特別に設計されたもので、長時間煮込んでも火力が落ちない構造になっています。これにより、羊肉が柔らかく、ジューシーな状態を保ったまま調理されます。

東来順の涮羊肉は、その厳選された食材と伝統的な技術に支えられ、長い歴史の中で発展してきました。数百年の伝統を持つこの料理は、現在も北京の代表的な食文化として人々に愛されています。

東来順の全国展開と成長

全国展開と現代の挑戦

東来順は、1996年に連鎖本部を設立し、全国規模でのチェーン展開を本格的に開始しました。これにより、それまで一店舗のみで営業していた東来順は、国内全域にその店舗数を増やしていきました。現在では、全国28の省や都市に100店舗以上を展開しており、主要都市を中心に成長を続けています。上海市内にも複数の支店を構えており、特に静安区の石門二路店や浦東新区の張楊路店が知られています。

東来順は、伝統的な清真料理を提供し続ける一方で、現代の消費者ニーズに応じたサービスの提供も積極的に行っています。例えば、ファーストフード形式やテイクアウトサービスを取り入れるなど、従来のレストランスタイルに加えて、利便性を重視した業態の拡大にも取り組んでいます。このように、東来順は伝統と現代性の融合を図りつつ、多様な顧客に対応するサービス展開を進めています。

その結果、東来順は2021年の「中国火鍋ブランドランキング」でトップ15にランクインするなど、伝統を守りながらも新たな挑戦を続けています。このランキング入りは、東来順が現代の市場競争においても強いブランド力を維持していることを示しています。

ブランドの成長と発展

東来順の成長は、1955年に公私合営を実現したことが大きな転機となりました。この体制変更により、経営規模が拡大し、従業員の体制が強化されました。また、社会的な地位も向上し、政府の支援を受けてさらなる発展を遂げました。1955年以降、東来順は単なる飲食店としてだけでなく、国内外の著名人や政府高官が集う社交の場としても利用されるようになりました。こうした地位の確立が、東来順のブランド力をさらに高める要因となりました。

その後、1988年には、東来順ブランドを中心とした北京東安飲食公司が設立され、製品の研究開発やマーケティングに注力するようになりました。この会社設立により、東来順は新たな商品展開を図り、企業の持続的な成長に向けた基盤が強化されました。また、東来順はチェーン展開においても着実に成長を遂げ、1996年の連鎖本部設立により、全国規模の拡大が加速しました。

現在、東来順の従業員数は6000人を超え、年商は6億円を上回る規模に成長しています。このような企業規模の拡大は、東来順が持続的に発展し続ける企業であることを示しています。東来順の成功は、伝統を守りつつも、時代に合わせた柔軟な経営戦略によるものであり、今後もさらなる成長が期待されています。

東来順の文化的価値と社会的役割

企業文化と歴史的影響力

東来順は単なる飲食店ではなく、文化的な意味を持つ場所として長い歴史を通じて機能してきました。創業当初から、東来順はその清真料理とともに、北京の伝統的な食文化の一部として認識されてきましたが、特に注目すべきは、国内外の高官や著名人たちが訪れる社交の場としての役割です。東来順は、ただ食事を提供するだけではなく、中国の文化や食の魅力を国内外に伝える場所として、多くの外交の舞台ともなりました。

具体的な事例として、アメリカのニクソン大統領やキッシンジャー国務長官、日本の田中角栄首相といった外国の要人たちが東来順を訪れ、涮羊肉を含む清真料理を楽しんだことが知られています。これらのエピソードは、東来順が単に料理を楽しむ場であることにとどまらず、中国と外国との友好関係の象徴的な場所として機能してきたことを示しています。

また、東来順は国内の著名人や高官も多く訪れる場所でした。中国の指導者である周恩来、鄧小平、葉剣英などが訪れ、国内外の賓客を接待したことは、東来順の社会的な重要性を高める要因となっています。このように、東来順は食文化の提供を超えて、中国の歴史や外交における重要な場として長い間機能してきました。

涮羊肉技術の無形文化遺産登録

東来順が提供する涮羊肉は、長年にわたり北京の伝統料理として親しまれてきましたが、その調理技術が評価され、2008年に国家級無形文化遺産に登録されました。これは、東来順の涮羊肉の技術と伝統が、文化的に重要であり保護すべきものであると認められたことを意味します。

この無形文化遺産としての登録は、東来順の調理技術が長い歴史を通じて受け継がれてきたことを象徴しています。涮羊肉の調理においては、羊肉の選定、スライスの技術、調理過程、そして提供方法のすべてが重要な要素とされています。特に、内蒙古の黒頭小尾羊の仔羊肉を使用する点や、青花瓷の皿に盛られるほど薄くスライスされた肉片は、東来順の技術の象徴です。

また、調理に使用される銅火鍋は、肉を短時間で加熱し、柔らかい食感を保つための重要な道具です。これらの技術や道具が、長年にわたり改良されながらも伝統を守り続けてきたことが、無形文化遺産としての価値を持つ理由となっています。こうした伝統は、現在も東来順の各店舗で守られており、技術の継承が続けられています。

このように、東来順は単なる飲食店の枠を超えて、中国の文化や歴史を体現する場所であり、涮羊肉という料理を通じて中華文化を国内外に広める役割を担っています。

困難と再起の歴史

幾多の困難と再興

東来順は、長い歴史の中で多くの困難を経験してきました。最も古い出来事としては、1912年に起こった東安市場の火災が挙げられます。東来順の創業者、丁徳山はこの市場で露店を開いていましたが、火災で市場が焼失し、彼の店も被害を受けました。しかし、市場の再建後、丁徳山は再び店舗を開設し、羊肉を提供する「東来順羊肉館」として事業を再興しました。この出来事が、東来順の再起の始まりとなりました。

また、戦時中にも東来順は経営困難に直面しました。1937年に日本軍が北平(現在の北京)を占領したことで、東来順は社会不安や物資不足の影響を受け、営業が困難な状況に陥りました。しかし、戦後も東来順は再び営業を続け、次第にその名声を取り戻していきました。

文化大革命時代には、東来順の店名が一時的に「民族餐廳」や「民族飯店」と改名されました。この時期、多くの伝統的な文化や商業が厳しい制約を受け、東来順もその影響を避けることはできませんでした。しかし、1979年には再び「東来順」の名前を取り戻し、ブランドの復興を果たしました。こうして東来順は、幾多の困難を乗り越えながらも、元の地位を確立し続けてきました。

ブランド事件と信頼の回復

2011年、東来順の華龍街店で提供された「鮮榨果汁」が実際には果汁粉を使って調合されたものであったことが消費者から告発されました。この事件は、東来順のブランドに一時的なダメージを与えました。果汁粉を使用しながら「鮮榨果汁」(新鮮に搾った果汁)として提供されていたことが発覚し、東来順の信頼性が疑われる結果となりました。

この事件は消費者の信頼を揺るがすものでしたが、東来順はその後、品質管理を強化するための取り組みを進めました。具体的には、商品の品質チェック体制を見直し、従業員の教育を徹底し、再発防止策を講じることで、失われた信頼を取り戻す努力を行いました。東来順のブランドは、このような一時的な打撃にもかかわらず、回復に成功し、引き続き国内外で高い評価を維持しています。

このように、東来順は創業以来、幾多の試練に直面しながらも、そのたびに立ち直り、現在の地位を確立してきました。歴史の中での困難やトラブルを乗り越えることで、今もなお北京を代表する清真料理の老舗ブランドとしての地位を保っています。

未来への展望と成長

東来順は、現在も全国展開を続けながら、さらに成長を目指しています。これまで築き上げてきた清真料理の伝統を大切にしながら、時代の変化に対応した発展を模索しています。東来順は、国内外の観光客や中華料理を求める人々に向けて、幅広いサービスを提供しています。

東来順は、全国28の省や都市に100店舗以上を展開し、主要都市に支店を持つことで、多様な顧客層にアプローチしています。国内外の観光客が東来順を訪れることも多く、特に涮羊肉(しゃぶしゃぶ)は、伝統的な清真料理として根強い人気を誇っています。また、近年ではファーストフード形式やテイクアウトサービスも導入するなど、現代的なサービス形態を取り入れ、幅広いニーズに対応しています。

東来順は、清真料理の伝統を維持しつつ、現代の消費者の多様な要求に応えるため、新たな試みを行っています。食文化に対する関心が高まる中で、東来順はその品質とサービスの維持に努め、国内外でのブランド価値を高めています。今後も、伝統と革新をバランスよく取り入れながら、さらなる成長を目指していく方針です。

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